キミと歌う恋の歌
「誰?」
質問の答えは彼の返事を待つまでもなく知っていたのだが、人を自ら遠ざけるような話し方しかできない私は冷たい言葉を少年にぶつけた。
「あ、ごめん!俺は藤村鷹斗!4年3組!よろしくな!」
白い歯をきらりと見せて、少年は窓の外から手を突き出してきた。
久しぶりに他意の見えない素直な言葉を真正面から受けて私は戸惑ってしまった。
いつものように毒を吐くこともできず、ピアノの前に座って足をぶらぶらを揺らしながら軽く頭を下げた。
私は彼を知っている。
いやたぶん、学校の人間なら誰もが知っているだろう。
なぜなら彼がうちの学年で最も有名な生徒が唯一心を開いている相手だからだ。
天使のような見た目をしておきながら、悪魔のような暴虐無人ぶりで転校してきて1ヶ月でその名を全校に知らしめた"上野玲央"。
気分を損ねたら急に教師も手がつけられないほど暴れ出し、その様子はもはや知性を持つ人間とはいえず、野生動物のようで、
転校してきた当初はその目立つ容姿のために良くも悪くも多くの生徒が彼を強く意識し、無闇矢鱈に近づいていたのだが、今じゃ誰も寄りつかない。
彼のいるクラスなんか彼の気分を損ねないようにするのがクラスの総意になっていて、活気をひどく失ってしまった。
だが、突如彼の手綱を引ける人間が現れた。
それがこの、目の前にいる藤村鷹斗だ。
上野玲央のことをレオと呼び捨てで呼び、一緒に登校し、彼が暴れたり人に迷惑をかけたら叱る。
当然のようにそれをやってのける藤村鷹斗は今や学校全体の救世主で神格化されている。
「なあ、ピアノいつからやってんの?うまいね」
私も遠目に見て噂で知っていただけで、直接話したはこれが初めてだ。
それなのに、彼はこちらがたじろぐほどに急激に距離を詰めてきて元からの友人のように気さくに話しかけてくる。
「あ、よ、幼稚園の時から」
相手が藤村鷹斗というだけでなく、そもそも普通に会話をするのも久しぶりで声がうわずる。
「へー!さすがだなー」
質問の答えは彼の返事を待つまでもなく知っていたのだが、人を自ら遠ざけるような話し方しかできない私は冷たい言葉を少年にぶつけた。
「あ、ごめん!俺は藤村鷹斗!4年3組!よろしくな!」
白い歯をきらりと見せて、少年は窓の外から手を突き出してきた。
久しぶりに他意の見えない素直な言葉を真正面から受けて私は戸惑ってしまった。
いつものように毒を吐くこともできず、ピアノの前に座って足をぶらぶらを揺らしながら軽く頭を下げた。
私は彼を知っている。
いやたぶん、学校の人間なら誰もが知っているだろう。
なぜなら彼がうちの学年で最も有名な生徒が唯一心を開いている相手だからだ。
天使のような見た目をしておきながら、悪魔のような暴虐無人ぶりで転校してきて1ヶ月でその名を全校に知らしめた"上野玲央"。
気分を損ねたら急に教師も手がつけられないほど暴れ出し、その様子はもはや知性を持つ人間とはいえず、野生動物のようで、
転校してきた当初はその目立つ容姿のために良くも悪くも多くの生徒が彼を強く意識し、無闇矢鱈に近づいていたのだが、今じゃ誰も寄りつかない。
彼のいるクラスなんか彼の気分を損ねないようにするのがクラスの総意になっていて、活気をひどく失ってしまった。
だが、突如彼の手綱を引ける人間が現れた。
それがこの、目の前にいる藤村鷹斗だ。
上野玲央のことをレオと呼び捨てで呼び、一緒に登校し、彼が暴れたり人に迷惑をかけたら叱る。
当然のようにそれをやってのける藤村鷹斗は今や学校全体の救世主で神格化されている。
「なあ、ピアノいつからやってんの?うまいね」
私も遠目に見て噂で知っていただけで、直接話したはこれが初めてだ。
それなのに、彼はこちらがたじろぐほどに急激に距離を詰めてきて元からの友人のように気さくに話しかけてくる。
「あ、よ、幼稚園の時から」
相手が藤村鷹斗というだけでなく、そもそも普通に会話をするのも久しぶりで声がうわずる。
「へー!さすがだなー」