キミと歌う恋の歌
「お前そんなこと気にしてたのか。何度も言ってんだろ?俺はお前が楽しいならそれでいい」


「そんな…」


「アイは俺の妹みたいなもんだからな。何も気にすんな」


途端に涙で視界が滲んでぐっと鼻水をすすって堪える。




翔太さんとはもう長い付き合いだ。


私が小学生、翔太さんがまだ見習いで働いていた頃に知り合った。


ある日家に姉の方の付き合いで客人が来て、私はいつものように家を追い出され町をうろついていた。

しばらく放浪していたけど、一応私はまだその時小学生低学年でその脚力には限界があった。

行き着いた先は商店街の楽器店。


ショーウィンドウに置かれた小さなアナログテレビの中に見つけたのは、たくさんの音楽だった。


ロック、ジャズ、邦楽、洋楽、様々なジャンルの曲がMVと共に次々と流れるのを私はかじりつくようにして聞いていた。


何時間もそうしていた私に翔太さんが声をかけてくれた。


「お前寒くねえの?」


まだ高校生だった翔太さんはぶっきらぼうで口も悪く、私は怖くてすぐ逃げようとした。

が、すぐ捕まった。


「お前親は?なんでこんな真冬にそんな薄着でこんなとこに何時間もいるわけ?」


そう問い詰められた時、お母さんが怒られちゃうと無意識に焦った。


私のせいでみんなが悪く言われちゃう。


とにかく掴んだ手を放り出して早く逃げたかった。


だけど小学生の女子の力が高校生の男子に敵うはずもなく、私は楽器店の中に引きずり込まれた。


そして、ふかふかのソファに座らされ、暖かい上着と暖かいお茶をもらった。


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