キミと歌う恋の歌
どうしよう…
第1音楽室の扉の前で悩み続けてもう5分が過ぎた。
4時間分の授業が全く頭に入らなかった私は結局のこのこと言われた通りにここまで来てしまった。
それにしても、とふと左右に首を振って周りを見回す。
誰もいない。
この校舎にいると、まるで世界でひとりぼっちにでもなってしまった気分だ。
10年くらい前までこの学校には音楽科があったらしい。
入学希望者が年を追うごとに減ってしまったせいで音楽科はなくなったらしいが、未だにその頃あった設備はしっかりと残っている。
防音完備の部屋がいくつもあり、この学校の吹奏楽部は他の学校から羨ましがられるみたいだ。
そんな音楽棟の2階の1番奥にあるのが第1音楽室。
その前まで私は来たのだが、ドアノブに手を伸ばすことができずにいる。
耳を澄ますと中から話し声が聞こえるので、たぶん上野くんと最低もう1人は誰がいるのだろう。
よし、一旦シミュレーションをしよう。
まず、このドアをノックする。そして、声が返ってきたら「失礼します」と中に入る。
最初はなんて言おう、
こんにちは?いやこんにちはって学生同士で使うのだろうか。初めまして、でもないし。
交友関係をこれまで持たずに生きてきたばかりに普通の人からだと笑われてしまいそうなことに悩んで行動に移せない。
と、とりあえずノックだけでもしてみるか。
しばらく悩んだ後に覚悟を決め、ドアから少し離れたところで裏返した拳をセットした。
ガチャ
錆びついた鈍い音を出してドアが開いた。
引っ込めた時にはもう遅く、拳にドアが勢いよく当たりジーンと痛みが広がり、もう片方の手で覆った。
「わ!ごめん!腕当たったよな?!ごめんどうしよ、ちょっレオーー!」
目の前でわかりやすく焦っているのは上野くんではなく、上野くんのグループの唯一の上級生の人だった。
張りのある声で心から心配してくれている彼に大丈夫ですと声をかけると、「ごめんな」と眉毛を下げて両手を顔の前で合わせた。
高い身長と焼けた肌に真っ白な歯が光る、やさしくて頼り甲斐のありそうな印象だ。
彼の後ろからひょこっと顔を出した上野くんが「どーした?」と言った。
「ドアの前にいたのに全然気づかなくてさ、腕があたっちゃったんだよ」
「まじ?大丈夫?」
「あ、もう大丈夫です」
「いや結構な音したぞ、保健室行った方が」
深刻な顔で私の腕をじっと見てくれているが、本当にこれくらいの痛みならもう訳がない。
「本当に大丈夫です」
「あ、メルー!お前湿布持ってないっけー?あ、入って入って」
上野くんは私の言葉を無視して中に向かって声を張り上げながら、中へと指差した。
第1音楽室の扉の前で悩み続けてもう5分が過ぎた。
4時間分の授業が全く頭に入らなかった私は結局のこのこと言われた通りにここまで来てしまった。
それにしても、とふと左右に首を振って周りを見回す。
誰もいない。
この校舎にいると、まるで世界でひとりぼっちにでもなってしまった気分だ。
10年くらい前までこの学校には音楽科があったらしい。
入学希望者が年を追うごとに減ってしまったせいで音楽科はなくなったらしいが、未だにその頃あった設備はしっかりと残っている。
防音完備の部屋がいくつもあり、この学校の吹奏楽部は他の学校から羨ましがられるみたいだ。
そんな音楽棟の2階の1番奥にあるのが第1音楽室。
その前まで私は来たのだが、ドアノブに手を伸ばすことができずにいる。
耳を澄ますと中から話し声が聞こえるので、たぶん上野くんと最低もう1人は誰がいるのだろう。
よし、一旦シミュレーションをしよう。
まず、このドアをノックする。そして、声が返ってきたら「失礼します」と中に入る。
最初はなんて言おう、
こんにちは?いやこんにちはって学生同士で使うのだろうか。初めまして、でもないし。
交友関係をこれまで持たずに生きてきたばかりに普通の人からだと笑われてしまいそうなことに悩んで行動に移せない。
と、とりあえずノックだけでもしてみるか。
しばらく悩んだ後に覚悟を決め、ドアから少し離れたところで裏返した拳をセットした。
ガチャ
錆びついた鈍い音を出してドアが開いた。
引っ込めた時にはもう遅く、拳にドアが勢いよく当たりジーンと痛みが広がり、もう片方の手で覆った。
「わ!ごめん!腕当たったよな?!ごめんどうしよ、ちょっレオーー!」
目の前でわかりやすく焦っているのは上野くんではなく、上野くんのグループの唯一の上級生の人だった。
張りのある声で心から心配してくれている彼に大丈夫ですと声をかけると、「ごめんな」と眉毛を下げて両手を顔の前で合わせた。
高い身長と焼けた肌に真っ白な歯が光る、やさしくて頼り甲斐のありそうな印象だ。
彼の後ろからひょこっと顔を出した上野くんが「どーした?」と言った。
「ドアの前にいたのに全然気づかなくてさ、腕があたっちゃったんだよ」
「まじ?大丈夫?」
「あ、もう大丈夫です」
「いや結構な音したぞ、保健室行った方が」
深刻な顔で私の腕をじっと見てくれているが、本当にこれくらいの痛みならもう訳がない。
「本当に大丈夫です」
「あ、メルー!お前湿布持ってないっけー?あ、入って入って」
上野くんは私の言葉を無視して中に向かって声を張り上げながら、中へと指差した。