キミと歌う恋の歌
「何か大きなことを始めて大成する人たちは始めから自信に満ち溢れていたからこそそれができたとつい考えてしまう。


それはよくわかります、僕もずっとそう思ってきた。


だけど、長い間生きてきてそれは違うんじゃないかと今思っているんです。


彼らは自信が人一倍なかったから、生きるために、自信を身につけるために無我夢中で大成したんじゃないかと。


そりゃあ誰もがそうとは限らないけど。


上野くんたちはどうでしょうか。


戸田さん、自分の中で決めつけることは簡単だ。
私はダメだ、彼らはすごい。
私は自信がない、彼らは自信がある。という風にね。


だけど、本当のことは本人にしかわかりません。
そして、本人でさえも本当のことがわからないことだってある。


何もかも決めつけちゃダメです。


君は可能性に満ちた少女なんだ。
できるか、できないかなんてわからないんだよ」


その通りだ、上野くんたちが本当はどんな人間かもわからないのに、私は決めつけたように言って。


それが1番嫌なことなのはきっと私が誰よりもわかっているのに。


だけど、どうしても最後の言葉が受け入れられなかった。


「違います、私はダメなんです。
ブスで、バカで、何にもできない、クズなんです…っ
私には何もないんです」


言いながら、何でこんなことをムキになって言っているんだろうとハッと我に帰った。


こんないつも言われていることをおうむ返しのように自分で繰り返してちゃ、世話もない。


出したこともないような怒鳴り声をこんなにも優しい教頭先生にぶつけてしまって、私は最低だ。


きっと嫌われる。


だけど、教頭先生は何も変わらない優しい微笑みで私にハンカチを差し出してくれた。


気づけば、頬に温かいものが伝っていた。


1日で何度流せば気がすむんだろう。


そう思っていると、突然教頭先生が思いついたように言い出した。


「戸田さん。
実は僕は魔法が使えるんです」


正直拍子抜けしてしまった。


私が面倒になったのだろうか。


だけど、教頭先生は気にすることなく続けた。


「だから僕が君に魔法をかけましょう。


もし君が勇気を出して今目の前にある彼らの手を握ったら、


君の世界は変わります


何もできない人間なんていませんよ」






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