キミと歌う恋の歌
「そして、さっきちらっと言ったけど文化祭でステージやるから!」


「あああの、でもあと1ヶ月しか…」


「うん、そう。だからちょっと頑張ってもらわなきゃいけないから、そこんとこよろしく!」


無邪気にそう言って笑う上野くんが少し怖かった。


他の3人も本当に私と同じタイミングで聞いたみたいで呆れたような表情をしていた。


「歌う曲とかって…」


「ああ、まだはっきりとは決めてないけど、とりあえずカバー4曲と、オリジナル1曲やろうかなって思ってる」


こともなしに、そう答える上野くんに唖然とする。


あと2週間で5曲を仕上げなきゃいけないんだ。
一曲たりとも中途半端な状態では出られない。


不安と緊張と、それからほんの少しのワクワクが混ざり合って鼓動が早くなったのを感じた。


「オリジナルの曲ってもう聞けるんですか?」


図々しいかなと一瞬躊躇したけど、好奇心は抑えられずそう尋ねてみた。


上野くんが作る曲を聞いてみたい。


「え、まだできてないよ?」


冗談でも言っているんだろうか?


「でき、てない?え、でもあと1ヶ月って…」


慌てて再確認してみたけど、上野くんはきょとんとした表情を変えることなく大きく頷いてみせた。


「そうだけど。曲なんて作ろうと思えばすぐ作れるし。余裕だよ」


まさか、と一瞬思った。


曲なんて使った経験ないし、ど素人だからそりゃあわからないけど、
でも1ヶ月で曲が一曲仕上がるのは常識なんだろうか。


作るだけじゃなくて、編曲や実際の楽器を使っての練習での調整も考えれば1ヶ月じゃ足りないんじゃ…


「レオを一般人と一緒にすんなよ。こいつは音楽に関しては天才だぞ」


ふいに背後から尖った声が聞こえた。


津神くんだ。


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