キミと歌う恋の歌
結局その日の数学の授業は一度も当てられなかった。
毎回必ず当てられるが、答えられず恥をかいているためほっと胸を撫で下ろした。
そして6時間目は何事もなく終わり、放課後になる。
帰る準備を終わらせると、津神くんが席に座った状態でこっちを見ていた。
もしかして待っていてくれたんだろうか。
「あ、の」
おどおどと声をかけると、津神くんは面倒くさそうに立ち上がってドアの方へ歩いて行った。
「すみません、わざわざ。あのさっきも庇ってくれてありがとうございました、」
早歩きで歩く津神くんを駆け足で追いかけながら、後ろからそう声をかけると、津神くんはギロッと私を睨みつけて何も言わずに目を背けた。
黒いオーラが後ろにはっきり見える彼に、怯えながら少し距離を置いた。
タカさんは本物の仲間になってやってくれと言ったけど、津神くんにそのつもりは一切なさそうだ。
昇降口には3人がすでに待っていた。
「お!きたきた。ソウジ偉いじゃん!」
上野くんがこっちに向かって大きく手を振りながらそう言った。
やっぱりその言葉に津神くんは不機嫌そうに眉をしかめていた。
3人のもとにたどり着くと、上野くんは笑っていて
、もしかしてこの人は常に笑っているだろうか。
なんてそんなしょうもないことを考えていると、突然目の前にいた上野くんが私の腕をぎゅっと掴んだ。
「アイ!走るぞ!」
「へっ?」
思わず素っ頓狂な声を上げたけど、上野くんは有無も言わさず、そのまま走り出した。
絡みついて、今にも倒れそうな情けない足を必死に踏ん張って一歩ずつ前に出す。
何歩か走っただけで、すでに肺がキュッと痛んで、呼吸が荒くなる。
肩からずり落ちそうなバッグを掴まれていない方の手で握った。
「な、なんでっですか?」
「トレーニングトレーニング。嫌?」
茶目っ気たっぷりのいたずらそうな表情を彼に向けられて、嫌と言える人はいないだろう。
「、が、頑張りますっ」
何とかそう答えると、上野くんはまだまだ全然平気そうな感じで後ろを振り向き、大声で後ろの三人に言った。
「先行ってるぞ〜」
「気をつけろよー!」
タカさんの大きな返事を背にそのまま走り続けた。
上野くんが先陣を切って走っていくのは私のいつもの通学路。
この景色は何度も何度も1人で見てきた。
なのに不思議だ。
誰かと見る、ただそれだけで何の変哲もなかった景色がパッと絵の具をばらまいたように色鮮やかに見えるんだ。
すごくきつくて、きっと1人じゃ耐えられない全力疾走もとまりたくないってそう思える。
吹き付ける風が優しくて、
まばゆい太陽が愛おしくて、
こんなの初めてだ。
私、今、幸せだ。
毎回必ず当てられるが、答えられず恥をかいているためほっと胸を撫で下ろした。
そして6時間目は何事もなく終わり、放課後になる。
帰る準備を終わらせると、津神くんが席に座った状態でこっちを見ていた。
もしかして待っていてくれたんだろうか。
「あ、の」
おどおどと声をかけると、津神くんは面倒くさそうに立ち上がってドアの方へ歩いて行った。
「すみません、わざわざ。あのさっきも庇ってくれてありがとうございました、」
早歩きで歩く津神くんを駆け足で追いかけながら、後ろからそう声をかけると、津神くんはギロッと私を睨みつけて何も言わずに目を背けた。
黒いオーラが後ろにはっきり見える彼に、怯えながら少し距離を置いた。
タカさんは本物の仲間になってやってくれと言ったけど、津神くんにそのつもりは一切なさそうだ。
昇降口には3人がすでに待っていた。
「お!きたきた。ソウジ偉いじゃん!」
上野くんがこっちに向かって大きく手を振りながらそう言った。
やっぱりその言葉に津神くんは不機嫌そうに眉をしかめていた。
3人のもとにたどり着くと、上野くんは笑っていて
、もしかしてこの人は常に笑っているだろうか。
なんてそんなしょうもないことを考えていると、突然目の前にいた上野くんが私の腕をぎゅっと掴んだ。
「アイ!走るぞ!」
「へっ?」
思わず素っ頓狂な声を上げたけど、上野くんは有無も言わさず、そのまま走り出した。
絡みついて、今にも倒れそうな情けない足を必死に踏ん張って一歩ずつ前に出す。
何歩か走っただけで、すでに肺がキュッと痛んで、呼吸が荒くなる。
肩からずり落ちそうなバッグを掴まれていない方の手で握った。
「な、なんでっですか?」
「トレーニングトレーニング。嫌?」
茶目っ気たっぷりのいたずらそうな表情を彼に向けられて、嫌と言える人はいないだろう。
「、が、頑張りますっ」
何とかそう答えると、上野くんはまだまだ全然平気そうな感じで後ろを振り向き、大声で後ろの三人に言った。
「先行ってるぞ〜」
「気をつけろよー!」
タカさんの大きな返事を背にそのまま走り続けた。
上野くんが先陣を切って走っていくのは私のいつもの通学路。
この景色は何度も何度も1人で見てきた。
なのに不思議だ。
誰かと見る、ただそれだけで何の変哲もなかった景色がパッと絵の具をばらまいたように色鮮やかに見えるんだ。
すごくきつくて、きっと1人じゃ耐えられない全力疾走もとまりたくないってそう思える。
吹き付ける風が優しくて、
まばゆい太陽が愛おしくて、
こんなの初めてだ。
私、今、幸せだ。