キミと歌う恋の歌
授業が終わり、先生が出て行って、クラスメイトたちは帰る準備を始めた。



部活に所属している生徒たちは、風のような速さで教室を出て行く。



何の部活にも所属していない私は、みんなの邪魔にならないように、しばらく座ったままで図書室で借りた小説を開いた。




小説の世界の中に潜り込む直前、後ろの方から楽しそうな数人の笑い声が聞こえてきた。




「まじでさっき酷くなかった?」




「それな、あれ録音して教育委員会みたいなのに出したら一発でクビじゃね?」




「それいいじゃん、あいつうざいからクビにしてやろーよ」




どうも、さっきの授業での出来事のことを話しているらしい。




気にしないように、本の中の文字に集中しようとするけれど、どうしても会話の内容に聞き入ってしまう。




「でもさあ、言いたくなる気持ちもわかるわ」




「まあね〜、とても匠サンと、未愛サンの妹とは思えないもん」




「うちらあの二人の妹がこのクラスにいるって聞いて初め、めっちゃ興奮してたもんね」




「期待うらぎんなよって感じだよね」




「ちょ、聞こえるって!ふふ」




シーッと宥める声が聞こえたが、本当は聞かせるつもりなんじゃないかと思うほどに全部聞こえている。





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