キミと歌う恋の歌
「いいいいいい妹なんて滅相もない!」
動揺して、声を上ずらせながら答えると、翔太さんはわかりやすく大きなため息をついた。
「お前がそんなに否定したら逆に怪しいだろ」
どう怪しいのかはよくわからなかったけど、とにかく駄目だったみたいだ。
翔太さんが言うことはいつも正しい。
「ごめんなさい」
素直に謝ったタイミングで、ちょうど店の固定電話がけたたましく鳴り響いた。
「おっ、じゃあお前らがんばれよー」
翔太さんはせわしなくカウンターのほうへ小走りで行ってしまい、私は何をするでもなく、ほかの三人の動向を気にしていると、タカさんが急に明るく手を打った。
「よし、やるか!」
その声につられるようにして、津上君と市川さんはスタスタと防音室の方へ行ってしまった。
私はというと、一歩踏み出すのがむずがゆくてそこから動けずにいた。
まだこのメンバーの一員だなんて微塵も思えないような自分がみんなに交じって歩いていくのを想像したら、だいぶ滑稽だったからだ。
しかし、
「アイもいくぞ!何固まってんだよ!」
「ほわっ」
急にタカさんから声を掛けられ、背中をどしんと叩かれて、思わず腑抜けた声を出してしまった。
「あ、ごめん痛かった?」
「いっいや全然!びっくりしただけです」
「よかった、ほら行こ」
タカさんにせかされて、ようやく私もそこから歩き出した。
防音室は3室ある。
それぞれ大きさが違って、私がいつも使わせてもらっているのは一番小さな部屋だ。
バンドで使っているのは一番大きな部屋で、二階にあるそうだ。
螺旋階段を横に並んで上っていると、不意にタカさんが口を開いた。
「アイさ、翔太とは普通に喋れんだな~」
「普通?ほ、本当ですか?」
「え、超普通じゃん」
「、、たぶん私が小さい頃からお世話になってるから」
「なんで知り合ったんだっけ?」
無意識に表情を強張らせてしまったのが自分でもわかる。
たぶんタカさんには見えてないから、早く無難に答えてしまえばスムーズに会話は続く。
なのに
「えっと…」
言葉に詰まってしまった。
急げ、急げ。何かそれらしいことを早く言わなきゃ。
家から追い出されたところを救われた?
これじゃ直球過ぎて、タカさんを困らせてしまう。
「あああの迷子になってたとこを助けてもらって」
何とか適当な返事を慌てて返すと、タカさんは一瞬こっちをちらっと見たけど、愛想笑いでごまかすと、また前を向きなおして
「へぇ~。翔太がね!まああいつ世話好きだもんな~。言ったっけ?俺たちいとこ同士でさ」
「いとこなんですか!?」
あ、まずい。
話遮っちゃった。
せっかく話してもらってるのに、何やってんの…
割と大きな声で遮ったくせに、そのまま何も言えずに黙り込んでしまった。
なのにタカさんはそんな私を見て豪快に声をあげて笑った。
「初めてじゃん、アイがそんなはっきり喋ったの。
アイさ、あんま遠慮すんなよ。
どんどん自分の思ったことは口に出していいんだよ」
タカさんはテレパシーの技でも使ってるのかなってくらい、人のことを知るのが得意みたいだ。
私の気持ちを手に取るように理解してくれて、フォローしてくれる。
「ありがとうございます。頑張ります」
「ま、そんな無理して変える必要もないけど。
アイがやりたいようにやればいいさ」
軽くのんびりと諭してくれるその態度が心地いい。
動揺して、声を上ずらせながら答えると、翔太さんはわかりやすく大きなため息をついた。
「お前がそんなに否定したら逆に怪しいだろ」
どう怪しいのかはよくわからなかったけど、とにかく駄目だったみたいだ。
翔太さんが言うことはいつも正しい。
「ごめんなさい」
素直に謝ったタイミングで、ちょうど店の固定電話がけたたましく鳴り響いた。
「おっ、じゃあお前らがんばれよー」
翔太さんはせわしなくカウンターのほうへ小走りで行ってしまい、私は何をするでもなく、ほかの三人の動向を気にしていると、タカさんが急に明るく手を打った。
「よし、やるか!」
その声につられるようにして、津上君と市川さんはスタスタと防音室の方へ行ってしまった。
私はというと、一歩踏み出すのがむずがゆくてそこから動けずにいた。
まだこのメンバーの一員だなんて微塵も思えないような自分がみんなに交じって歩いていくのを想像したら、だいぶ滑稽だったからだ。
しかし、
「アイもいくぞ!何固まってんだよ!」
「ほわっ」
急にタカさんから声を掛けられ、背中をどしんと叩かれて、思わず腑抜けた声を出してしまった。
「あ、ごめん痛かった?」
「いっいや全然!びっくりしただけです」
「よかった、ほら行こ」
タカさんにせかされて、ようやく私もそこから歩き出した。
防音室は3室ある。
それぞれ大きさが違って、私がいつも使わせてもらっているのは一番小さな部屋だ。
バンドで使っているのは一番大きな部屋で、二階にあるそうだ。
螺旋階段を横に並んで上っていると、不意にタカさんが口を開いた。
「アイさ、翔太とは普通に喋れんだな~」
「普通?ほ、本当ですか?」
「え、超普通じゃん」
「、、たぶん私が小さい頃からお世話になってるから」
「なんで知り合ったんだっけ?」
無意識に表情を強張らせてしまったのが自分でもわかる。
たぶんタカさんには見えてないから、早く無難に答えてしまえばスムーズに会話は続く。
なのに
「えっと…」
言葉に詰まってしまった。
急げ、急げ。何かそれらしいことを早く言わなきゃ。
家から追い出されたところを救われた?
これじゃ直球過ぎて、タカさんを困らせてしまう。
「あああの迷子になってたとこを助けてもらって」
何とか適当な返事を慌てて返すと、タカさんは一瞬こっちをちらっと見たけど、愛想笑いでごまかすと、また前を向きなおして
「へぇ~。翔太がね!まああいつ世話好きだもんな~。言ったっけ?俺たちいとこ同士でさ」
「いとこなんですか!?」
あ、まずい。
話遮っちゃった。
せっかく話してもらってるのに、何やってんの…
割と大きな声で遮ったくせに、そのまま何も言えずに黙り込んでしまった。
なのにタカさんはそんな私を見て豪快に声をあげて笑った。
「初めてじゃん、アイがそんなはっきり喋ったの。
アイさ、あんま遠慮すんなよ。
どんどん自分の思ったことは口に出していいんだよ」
タカさんはテレパシーの技でも使ってるのかなってくらい、人のことを知るのが得意みたいだ。
私の気持ちを手に取るように理解してくれて、フォローしてくれる。
「ありがとうございます。頑張ります」
「ま、そんな無理して変える必要もないけど。
アイがやりたいようにやればいいさ」
軽くのんびりと諭してくれるその態度が心地いい。