キミと歌う恋の歌
「唇を、震わせる、
どういうことだ…」
書いてある文字をなぞりながら自然と独り言をもらした。
試しに唇を引っ張って離したり、指をあてて小刻みに揺らしたりしたけど、震えることはなかった。
出だしからうまくいかないって悲しすぎる。
さすが私だ。
「わかんないの?」
首を捻らせていると、上野くんが隣から覗き込んできて、そう聞いた。
「あ、えっと」
こんなこともできないのかと言われているようで、思わずくちごもってしまう。
「やったことない?子供の時とかに、ほらこれ」
そう言いながら、上野くんは自分の唇を指さした。
そして、小刻みに唇を震わせて見せた。
「ふ、震えてます!」
乗り出して、じっと見つめながらそう言うと、上野くんは吹き出したように笑った。
「震わせてんだから震えるさ、ほらアイの番だよ」
「は、はい」
とにかく真似だ。
さっき見た通りに、
そう思って、開いていた口を閉じた時扉が勢いよく開いた。
「レオ!次予約入ってるだってよ」
譜面を見に行っていた3人だ。
「え、もう終わり?何もしてないじゃん」
タカさんの言葉に上野くんは不満そうに口を尖らせた。
「仕方ないでしょ。翔太さんは部屋代割引してくれてるんだから迷惑かけないの」
そんな上野くんをなだめる市川さんはもうすでに自分の荷物をまとめはじめていた。
「とりあえず譜面見つけてきたから、コンビニでコピーして今日は帰るかー」
タカさんも調子良く片付けながら、上野くんを急かした。
その間に津神くんは何も言わずに部屋を立ち去ろうとしていた。
私も慌てて立ち上がりながら、
「あの、これお借りします。ありがとうございます」
もう一度上野くんにお礼を言っておいた。
「うん。全然いいよ」
上野くんは子供のように頬を膨らせたまま、頷いてぶっきらぼうに立ち上がってバッグを肩にかけた。
タカさんに追い出されるままに部屋を出て、ロビーに行くと、翔太さんが待っていた。
「おお、アイ。どうだった?」
私が出てきたのを見て、翔太さんが笑いながら尋ねてきた。
「えっと、た、楽しかったです」
私はというと、そんな翔太さんの優しい質問にも陳腐な返事しかできない。
「そりゃあよかったな。俺も学祭見に行くから頑張るんだぞ」
気にするそぶりもなく、翔太さんはそう言った。
「見にきてくれるんですか!?」
驚きながらそう返すと、翔太さんは親指を上に立ててウィンクした。
「もちろんさ」
「え、来るの?翔太。店はどうすんのさ」
すると、後ろから来ていたタカさんが翔太さんの言葉を聞いてそばに寄ってきた。
「まあ昼間は全然客来ないし、母さん1人で大丈夫だろ、お前らの初舞台見逃すわけにはいかないだろ」
そう言って見せた翔太さんの微笑みに感動していると、上野くんが後ろからタカさんの肩に腕を回してニヤッと笑った。
「そうだな!翔太必ず見にきて、俺らが売れた時自慢しろよ。なんなら今のうちからサインでも飾っとくか」
得意そうに口角を上げる上野くんはすっかりご機嫌そうだ。
そんな上野くんは次の瞬間前後から頭にチャップを喰らった。
翔太さんと、市川さんだ。
「調子乗んな!そういうことはな、学祭を成功させてから言え」
言葉だけだと厳しいけれど、そう言い返す翔太さんの笑顔は愛情に溢れていた。
「ったく、なんでメルまで」
上野くんは頭をさすりながら、頬を膨らませた。
「あんたがあんまり翔太さんに迷惑かけるからでしょ。もう少し大人しくしとけないの?」
「はいはい、喧嘩はよしな。高校生はもう帰りなさーい」
そんな彼らを翔太さんは慣れたようにパンパンと手を叩いて、出口の方へ誘導した。
外に出ると、外はもう日が落ちて真っ暗になっていた。
どういうことだ…」
書いてある文字をなぞりながら自然と独り言をもらした。
試しに唇を引っ張って離したり、指をあてて小刻みに揺らしたりしたけど、震えることはなかった。
出だしからうまくいかないって悲しすぎる。
さすが私だ。
「わかんないの?」
首を捻らせていると、上野くんが隣から覗き込んできて、そう聞いた。
「あ、えっと」
こんなこともできないのかと言われているようで、思わずくちごもってしまう。
「やったことない?子供の時とかに、ほらこれ」
そう言いながら、上野くんは自分の唇を指さした。
そして、小刻みに唇を震わせて見せた。
「ふ、震えてます!」
乗り出して、じっと見つめながらそう言うと、上野くんは吹き出したように笑った。
「震わせてんだから震えるさ、ほらアイの番だよ」
「は、はい」
とにかく真似だ。
さっき見た通りに、
そう思って、開いていた口を閉じた時扉が勢いよく開いた。
「レオ!次予約入ってるだってよ」
譜面を見に行っていた3人だ。
「え、もう終わり?何もしてないじゃん」
タカさんの言葉に上野くんは不満そうに口を尖らせた。
「仕方ないでしょ。翔太さんは部屋代割引してくれてるんだから迷惑かけないの」
そんな上野くんをなだめる市川さんはもうすでに自分の荷物をまとめはじめていた。
「とりあえず譜面見つけてきたから、コンビニでコピーして今日は帰るかー」
タカさんも調子良く片付けながら、上野くんを急かした。
その間に津神くんは何も言わずに部屋を立ち去ろうとしていた。
私も慌てて立ち上がりながら、
「あの、これお借りします。ありがとうございます」
もう一度上野くんにお礼を言っておいた。
「うん。全然いいよ」
上野くんは子供のように頬を膨らせたまま、頷いてぶっきらぼうに立ち上がってバッグを肩にかけた。
タカさんに追い出されるままに部屋を出て、ロビーに行くと、翔太さんが待っていた。
「おお、アイ。どうだった?」
私が出てきたのを見て、翔太さんが笑いながら尋ねてきた。
「えっと、た、楽しかったです」
私はというと、そんな翔太さんの優しい質問にも陳腐な返事しかできない。
「そりゃあよかったな。俺も学祭見に行くから頑張るんだぞ」
気にするそぶりもなく、翔太さんはそう言った。
「見にきてくれるんですか!?」
驚きながらそう返すと、翔太さんは親指を上に立ててウィンクした。
「もちろんさ」
「え、来るの?翔太。店はどうすんのさ」
すると、後ろから来ていたタカさんが翔太さんの言葉を聞いてそばに寄ってきた。
「まあ昼間は全然客来ないし、母さん1人で大丈夫だろ、お前らの初舞台見逃すわけにはいかないだろ」
そう言って見せた翔太さんの微笑みに感動していると、上野くんが後ろからタカさんの肩に腕を回してニヤッと笑った。
「そうだな!翔太必ず見にきて、俺らが売れた時自慢しろよ。なんなら今のうちからサインでも飾っとくか」
得意そうに口角を上げる上野くんはすっかりご機嫌そうだ。
そんな上野くんは次の瞬間前後から頭にチャップを喰らった。
翔太さんと、市川さんだ。
「調子乗んな!そういうことはな、学祭を成功させてから言え」
言葉だけだと厳しいけれど、そう言い返す翔太さんの笑顔は愛情に溢れていた。
「ったく、なんでメルまで」
上野くんは頭をさすりながら、頬を膨らませた。
「あんたがあんまり翔太さんに迷惑かけるからでしょ。もう少し大人しくしとけないの?」
「はいはい、喧嘩はよしな。高校生はもう帰りなさーい」
そんな彼らを翔太さんは慣れたようにパンパンと手を叩いて、出口の方へ誘導した。
外に出ると、外はもう日が落ちて真っ暗になっていた。