キミと歌う恋の歌
日付が変わって次の日。
昨日は眠れなかった。
興奮しちゃって、次から次に書きたいものが見つかって気づけば夜が明けていて、一目散にシャワーだけ浴びて着替えておにぎりだけ食べて家を出てきた。
登校してからも落ち着かなくて、トイレに向かっていると、
「ア!」
「うわっ」
急に後ろから大声で肩を掴まれ、私にしては珍しく大きなリアクションをしてしまった。
振り向くと、そこには今日も天使のように可愛らしい市川さんがいた。
「あ、す、すみません。変な声出しちゃって。おはようございます」
焦って大袈裟に謝りすぎてしまったかもしれない。
さっきまで読みづらい表情をしてた市川さんがまた不機嫌そうに口をへの字にしてしまった。
「…おはよう。これ、昨日言ってたやつ」
表情を変えてくれないどころか、そっぽまで向いてしまった彼女は低い声でそう言って、私の前に手を出した。
その手の上には薄いピンク色の携帯のような端末が乗っていた。
「あ!音楽を聴くという…」
「ウォークマンね。曲はもう入れたから」
納得して手を打つと、市川さんは面倒臭そうにそう答えながら私にそれを押し付けた。
ありがたく両手で受け取ると、思ったよりそれは軽くて、おもむろにボタンを触ってみると液晶画面にメニュー画面と表示された。
使い方がわからない身で適当に扱うのも悪い気がして首を捻らせると、市川さんが隣にきて指で指し示しながら教えてくれた。
「ここ押したら曲の一覧が出るから、矢印押して動かして、それで真ん中のボタン押したら流れる」
市川さんはせっかく詳しく教えてくれているのに、私は緊張でどうにかなりそうだった。
真横に、直ぐ近くにあるその顔は、隣に私が存在するのも差し出がましいほどに小さく、その長く太い睫毛が私の顔に微かに当たっていた。
今日の彼女の髪型は、ふわふわの髪をハーフアップにしていてゆるりと肩に落ちている髪がほんの少し吹き込んでいる風に揺れているのがなんというか妖精みたいに神秘的だ。
「…ねえ、わかった?」
「あ!す、すみません、わかりました。本当に、本当にありがとうございます。あの、必ずいつかお返しします」
怪訝そうに私を見つめる市川さんに、必死で取り繕う。
そうだ、必ずお礼をしなくちゃ。
このウォークマンってやつもきっとすごく高価なものだ。
その上新しい曲はわざわざ買ったものをダウンロードしてくれて、なのに私はそれをタダで借りている。
感謝しても仕切れない。
昨日は眠れなかった。
興奮しちゃって、次から次に書きたいものが見つかって気づけば夜が明けていて、一目散にシャワーだけ浴びて着替えておにぎりだけ食べて家を出てきた。
登校してからも落ち着かなくて、トイレに向かっていると、
「ア!」
「うわっ」
急に後ろから大声で肩を掴まれ、私にしては珍しく大きなリアクションをしてしまった。
振り向くと、そこには今日も天使のように可愛らしい市川さんがいた。
「あ、す、すみません。変な声出しちゃって。おはようございます」
焦って大袈裟に謝りすぎてしまったかもしれない。
さっきまで読みづらい表情をしてた市川さんがまた不機嫌そうに口をへの字にしてしまった。
「…おはよう。これ、昨日言ってたやつ」
表情を変えてくれないどころか、そっぽまで向いてしまった彼女は低い声でそう言って、私の前に手を出した。
その手の上には薄いピンク色の携帯のような端末が乗っていた。
「あ!音楽を聴くという…」
「ウォークマンね。曲はもう入れたから」
納得して手を打つと、市川さんは面倒臭そうにそう答えながら私にそれを押し付けた。
ありがたく両手で受け取ると、思ったよりそれは軽くて、おもむろにボタンを触ってみると液晶画面にメニュー画面と表示された。
使い方がわからない身で適当に扱うのも悪い気がして首を捻らせると、市川さんが隣にきて指で指し示しながら教えてくれた。
「ここ押したら曲の一覧が出るから、矢印押して動かして、それで真ん中のボタン押したら流れる」
市川さんはせっかく詳しく教えてくれているのに、私は緊張でどうにかなりそうだった。
真横に、直ぐ近くにあるその顔は、隣に私が存在するのも差し出がましいほどに小さく、その長く太い睫毛が私の顔に微かに当たっていた。
今日の彼女の髪型は、ふわふわの髪をハーフアップにしていてゆるりと肩に落ちている髪がほんの少し吹き込んでいる風に揺れているのがなんというか妖精みたいに神秘的だ。
「…ねえ、わかった?」
「あ!す、すみません、わかりました。本当に、本当にありがとうございます。あの、必ずいつかお返しします」
怪訝そうに私を見つめる市川さんに、必死で取り繕う。
そうだ、必ずお礼をしなくちゃ。
このウォークマンってやつもきっとすごく高価なものだ。
その上新しい曲はわざわざ買ったものをダウンロードしてくれて、なのに私はそれをタダで借りている。
感謝しても仕切れない。