キミと歌う恋の歌
学校から私の家までは徒歩で10分もない。
商店街をくぐり抜け、周りの様相とあまり似つかわしくない、洋風で大きなお屋敷のような家が私の帰る場所。
商店街のアーケードが残りわずかになればなるほどに足が重くなっていくのを感じる。
学校に友達はいなくてもあそこは私の安全地帯だ。
時々平穏にヒビを入れられることがあっても、崩壊することはない。
だけど家の中は違う。
生まれた時から私は宇宙に身一つで放り出された気分だ。
いつの間にか家の前に着いていて、
白と茶色を基調とした外装をじっくりと見上げる。
この家で私は息ができない。
意を決してからドアに手をかけ、あまり音を出さないように慎重に開けた。
リビングはすでに電気がついていて、明かりが漏れ出している。
気づかれないように、そっと靴を脱ぎ、真っ白なフローリングの床の上に上がった。
一歩目を踏み出そうとした次の瞬間、後ろから閉めたはずのドアがまた開く音が聞こえた。
反射的に肩を震わせた。
「あっ、愛水〜」
鼻にかかる高い声で私の名前を呼び、美しい彼女は天使の微笑みを浮かべた。
鼻歌を歌いながら、高いハイヒールを脱ぎ始める彼女をじっと見つめながら少しずつ後退りをして階段の方へ向かう。
ここにいつまでもいてもいいことはない。
だけど、目ざとくそんな私に気づいて跳ねるような口調で彼女は言う。
「逃げちゃだめだよー」
表情が見えないが、なんとなくわかる。こんな風に明るい話し方をする時は大抵すこぶる機嫌が悪い。
商店街をくぐり抜け、周りの様相とあまり似つかわしくない、洋風で大きなお屋敷のような家が私の帰る場所。
商店街のアーケードが残りわずかになればなるほどに足が重くなっていくのを感じる。
学校に友達はいなくてもあそこは私の安全地帯だ。
時々平穏にヒビを入れられることがあっても、崩壊することはない。
だけど家の中は違う。
生まれた時から私は宇宙に身一つで放り出された気分だ。
いつの間にか家の前に着いていて、
白と茶色を基調とした外装をじっくりと見上げる。
この家で私は息ができない。
意を決してからドアに手をかけ、あまり音を出さないように慎重に開けた。
リビングはすでに電気がついていて、明かりが漏れ出している。
気づかれないように、そっと靴を脱ぎ、真っ白なフローリングの床の上に上がった。
一歩目を踏み出そうとした次の瞬間、後ろから閉めたはずのドアがまた開く音が聞こえた。
反射的に肩を震わせた。
「あっ、愛水〜」
鼻にかかる高い声で私の名前を呼び、美しい彼女は天使の微笑みを浮かべた。
鼻歌を歌いながら、高いハイヒールを脱ぎ始める彼女をじっと見つめながら少しずつ後退りをして階段の方へ向かう。
ここにいつまでもいてもいいことはない。
だけど、目ざとくそんな私に気づいて跳ねるような口調で彼女は言う。
「逃げちゃだめだよー」
表情が見えないが、なんとなくわかる。こんな風に明るい話し方をする時は大抵すこぶる機嫌が悪い。