彼の溺愛はわかりづらい。


いや、さすがにね。
ちゃんとした意味は知ってるけど。

多分、しぃが言いたいのはそういうことじゃないもんね。



「オタクのくせに鈍感だよね、琴は」

「オタクのくせにってなに。オタク馬鹿にすんな」

「別に馬鹿にはしてないよ」



どーだか。
そんなこと言ったって、しぃは結構噓つきだもんなぁ。

…ま、今さら、どうでもいいけどさ。



「…じゃ、遅れるからそろそろ行くね」

「報告よろしく」

「やだよ、めんどい」

「アイス奢る」

「いらない」



いつもの私なら喜んで飛びついてるだろうけど、それも海堂と行くんだし、別にしぃにまで奢ってもらわなくていい。
っていうか、そんなに食べたらお腹壊すよ。海堂も心配してたのに。



「…つまらん」

「だから、どうでもいいんだけど」

「琴、ひどい」

「このやり取り本当に終わらなそうだから、もう行くね。じゃ」



まだ何か言いたげなしぃと、財布から出した千円札を残して、私はファミレスを出た。




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