彼の溺愛はわかりづらい。
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「ただいまー」
「おかえり。…琴、海堂くん来てる」
「え、ほんと?」
「…琴、あんなに無気力だったのに、海堂くんの名前聞いた途端に元気になるの、やめてくれるかな…」
「別に、元気になったわけじゃ…」
ない、わけでもないのかもしれない。
ちょっとだけ、ほんのちょびっとだけ、嬉しかったりしたし。
「琴に彼氏とかできたら、俺、泣いちゃうよ?」
「…泣いていいよ。早く好きな人できるといいね、お兄ちゃん」
「琴、ひどい」
今のどこがひどいのか、全くわからない。
お兄ちゃんを想う、健気な妹心なのに。
「…じゃあ、またあとでね、お兄ちゃん。部屋行ってくる」
「…イチャイチャしないように」
「そんな間柄じゃないし」
さっきまで、「彼氏できたら泣いちゃうよ?」とか言ってたくせに、自分からそんなこと言ってどうすんの。
そもそもしないのに。例え好きな相手だとしても、誰かがいるときにはそういうことはしたくない…。特に、お兄ちゃんに見つかったらめんどくさいことになるだろうし。