彼の溺愛はわかりづらい。
めんどくさいお兄ちゃんを放って自分の部屋に行くと、お兄ちゃんの言った通り海堂がいた。
「よ」
「…ん」
短い挨拶を済ませて、海堂の近くにいく。
ドキドキと、鼓動が速い。
…やっぱり好き、なのかもしれない。
それだけで判断できるほど、恋愛は簡単じゃないと思うけど。
「…今日は、数学教えてください…」
「いいけど。なんで敬語」
「いや、なんとなく。お願いするときだし」
「…そんなのしなくたって、聞いてやるよ。お前の頼みなら」
…ダメだ、心臓に悪い。
…自分で言ったくせに、自分で赤面してるし。
それにドキドキしてるのは、きっと勘違いなんかじゃない。
ほんと、ズルいなぁ。
「…ありがと」
「別に」
…素直じゃないな。
まぁ、お互い様なんだろうけど。
私もたいがい、素直じゃないし。なれない。
海堂とはずっとケンカばっかりだったから、今さらどうやって接したらいいのかわからない。
…っていう言い訳ばっか並べて、動けない。