彼の溺愛はわかりづらい。
▼もっと、欲張りになる《side 海堂》
ずっと前から好きだった。
話せるだけで、柄にもなく舞い上がって。
…なのに、今は。
「…これ、中学で習ってたとか、冗談じゃないの」
そんなセリフを発するアホ全開の目の前のコイツを、抱きしめたくて仕方ない。
…どんどん欲張りになっていく自分がいて、最終的には、俺はコイツに何を求めてしまうんだろう。
それが、怖くてたまらない。
「…ねー、海堂。ここ、中学でやったとかマジ?」
「…マジだよ」
いや、そもそもそれ、入試にも出るはずなんだけど。基本中の基本なんだけど。
…アホなのか。
「うっそ、やっぱり?…わかる」
「逆に聞きたいけどどうやって高校入ったんだ」
「勘で乗り切った」
「…。教えてやるから、覚えろ」
「へぇい」
素直に頷いてくれるコイツは、結構ゲンキンな奴で。
今までなら、きっとキャンキャン噛み付いてきたんだろうけど。
…俺たちの関係が進んだのか、ただ単にコイツのゲンキンなところが出てるだけなのか。
…わからない。