彼の溺愛はわかりづらい。


「…ラベンダー?」

「うん。お母さんがね。ハーブとか好きらしくて、時々教えてもらうんだけど。ラベンダーにはリラックス効果があるんだって。匂い嗅いでると、眠くなったり」

「…そーか」

「なんか、海堂といると、最近落ち着いて眠くなるっていうか…。勉強中だからっていうのもあるだろうけど」



…期待、させないでくれ。

欲しいものが、したいことが。どんどん増えていくから。
抑えが利かなくなる前に、それはやめてくれ。



「…そーいえば、この前お兄ちゃんが言ってたんだけどね。『海堂くんとちょっと』って。何があったの?」

「…言えねぇ」

「またそれ?」

「ムリだから」



あの話を、本人の耳に入れるとか…羞恥心で殺す気か。



「…ホントの気持ち、話そうと思ったのに」

「は?」

「心の準備が必要だから。それまでに、モヤモヤ解消したくて」



…なんだよ、ホントの気持ちって。
期待、20パーセント。不安、80パーセント。

…けど、コイツのこんな顔は見たくないから。



「…仕方ねぇな。教えてやるから。…引くなよ」

「多分引かない」

「絶対引かないでくれ」

「イエス、サー」




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