彼の溺愛はわかりづらい。







中学3年、夏。



「クソ暑い…」

「溶けるよね~」

「羽澄、笑ってんじゃねぇ…」

「部活の引退試合するんでしょ。気合い入れなよ」

「無理だ、溶ける…」



バスケ部のエースとしてやっている俺も、今日で引退。


…だけど。

暑すぎて気合いなんか入らない。早く終われ。
しかも、毎回応援に来る女子たちが、やたらとうるさいから、余計に憂鬱だ。



「あー、早く帰ってクーラー当たりてぇ…」

「まだ着いてもないのに?」

「想像しただけで嫌なんだよ」

「後輩くんたち悲しむよ、そんなこと言ってると」

「知るか」



めんどくせぇ。

中学では部活に入るのが強制だったけど、高校では絶対入らねぇ。決めた。



「つーか、お前は何しに行くんだよ」

「燈の中学の手前のコンビニまでアイス買いに」

「鬼畜か。死ね」

「うっわぁー、ひっどーい」

「キモい」




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