彼の溺愛はわかりづらい。
つーか羽澄、顔も女みてぇだから、その口調すげぇ似合ってるぞ。
本人には絶対言わねぇけど。さすがに。怒られる、母さんに。
なんてことを思いながら何気なく振り向いてみると、挙動不審な女子がいた。
キョロキョロしていて、落ち着きがない。
俺がずっと後ろを見たままだったのを不思議に思ったのか、羽澄も俺と同じ方向を向いた。
「…あ、女の子」
「お前が言うとチャラく聞こえるからもうお前黙れ」
「燈ひどい」
隣でウソ泣きをしている羽澄を放置したまま、ウロウロしていて、明らかに道に迷っている様子の女子に近づく。
…俺と同い年くらいだろうか。
Tシャツにショートパンツというラフな恰好だが、伸びている脚は、こんなにも日差しが強いというのに、真っ白い。少し心配になる程度。
…あ、つーか。
もしかしたら、あのうるせぇ女子の中の一人かもしれねぇし。
あっぶね。なに声かけようとしてんだよ、俺。
「ねぇねぇ、そこの子。道にでも迷ったの?」
…羽澄テメェ。…ぶっ殺す。
人が無視しようと決めたものを。
「…」
「え、気づいてない感じ?おーい、おねーさーん」
「…私?」