彼の溺愛はわかりづらい。


ドクン


…いや、ちょっと待て。
なんだよ、今の。わけわかんねぇ。


マヌケ面をして振り返ったそいつは、マヌケ面をいていてもわかるくらい、可愛らしい顔をしていた。

…もしもコイツが俺の応援に来てくれるんだったら、きっとテンションが上がるんだろうな。



「そうそう。私。迷子?」

「…そうです」



羽澄、黙れつったのに。
羽澄のチャラさが伝わっているのか、女も若干引き気味な顔をしている。

…羽澄、これで教育学部とか、何かの冗談だろ。



「どこ行くの?もしかして、そこのコンビニ?」

「違います」

「じゃあ、二中のバスケの試合観に行くの?」

「もっと違います」



…違うのか。
なんて、少しだけ落胆した気がするのは、きっと気のせいだろう。

つーか、「もっと違う」って何なんだ。



「…私のことはお気になさらず」

「いや、ここまで来たら無理だろ」

「え」



……………あ。
なんでウッカリ突っ込んでんだ、俺。




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