彼の溺愛はわかりづらい。







「……あ」



あれから、無事に二高に合格できたのが、やっぱり夢なんじゃないかと思うくらい、現実味はなかった。

けれど、クラス発表の紙の中に、自分の名前が書かれていたことで、ようやく安心してきて。


知ってるヤツはもちろんいなかったが、とりあえず気にならなかった。


…そういえば、羽澄の奴が「サプライズがある」とか言ってたけど。
…嫌な予感しかしない。


密かな不安を抱えながらも、俺は振り分けられたクラスに向かった。


1年のフロアには、当たり前だけど、ピカピカの制服を着たヤツがほとんどで。

…高校なんだな…って思った。今さらだけど。


…人の多さに少し吐き気する。



「あれ?海堂?」

「……は?…志波?」

「…海堂の頭で、ここ来れたんだ」

「余計なお世話だ」



誰も知り合いはいないと思ったけど。
…いたらしい。女子は見てなかった。

しかも、なんでよりによってコイツなんだ。
腹黒で有名だった志波栞。




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