彼の溺愛はわかりづらい。


…どうか彼女が、志波に襲われませんように。

そんな切実すぎる願いを持ったけど、数日経ったとき、それは必要ないと思った。
二人とも楽しそうだったから。


あの彼女に、話しかけられない。
…あんなに意気込んでいたのに、勇気が出ない。

残念ながら、俺のことは忘れられてたし。
自己紹介のときも、俺の方を確実に向いていたはずなのに、完全スルーだった。



「…ねぇ」

「うおっ、」

「海堂、その反応なに?」



声をかけてきたのは、志波。
…クジ引きで学級委員になんかなっちまった、少し哀れな奴。



「…いや、急に声かけられたから、少しビビっただけ」

「ふーん…?」



疑わしそうに俺を見るな。



「で、何の用だ?」

「琴のこと好きなんでしょ」

「!?」



…なんでバレた。
俺、そんなにわかりやすいのか?



「琴のこと見過ぎ」



…それは、自覚してたけど。
ストーカーみたいだな…とも思った。




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