彼の溺愛はわかりづらい。


「…わかってっけど」



わかってはいるけど、直しようがない。
…意識してても、見てしまうくらい好きなんだから。



「ほほー。ベタ惚れとみた」

「…そーだけど、わりぃかよ」

「べっつにー?」



…そのニヤニヤした顔を、できるならばグシャっとしてやりたい。
ムカつくわ、志波。



「今度の席替え。仕組んであげようか」

「は?」

「購買の幻のパンとの交換で」

「…は?」



…できんの?
そりゃあ、願ったり叶ったりだけど。

幻のパンとの交換なんて、きっとどうってことない。



「…やる」

「めっちゃ好きなんだね、琴のこと」

「…」

「だんまりは肯定とみた」




< 163 / 209 >

この作品をシェア

pagetop