彼の溺愛はわかりづらい。


うん、志波。
…もう黙っててくれ。



「わかりやすいけど、わかりにくい奴だよね、海堂って」

「どーゆー意味だよ」

「琴をめっちゃ見てるし、わかる人にはわかるけど、どう見てもガンつけてるようにしか見えないと思うよ。…特に琴からしてみれば」

「…なるほど」



そうは言っても。
どうすりゃあいいってんだよ。

つーか別に、知られてもいい。
なんせ、自分じゃ言い出せそうにねぇからな。



「まぁとりあえず。幻のパンよろしく」

「…じゃあこっちは席替えよろしく」



とりあえず。
心強い後ろ盾ができた。

…と、思うことにしよう。
利用されてるとか、面白がられてるとか、そういうことは思わないようにしねぇと。うん。









そして次の日。
俺はばっちり、幻のパンを手に入れた。



「志波、これ」

「え、マジで手に入れたの?これ」

「渡せっつったのはそっちだろ」

「…マジで琴に惚れてんのな。軽くいじらしいよ」

「…るせー」




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