彼の溺愛はわかりづらい。


「…好きだよ、ずっと。お前のこと」

「…!」

「ズルいよな、お前って。俺は今まで、何回も言ってんのに」

「う」



でもさ。
人の気持ちなんて、簡単に変わっちゃうじゃん。

同じときに、同じ気持ちでいる…ってことが、いちばん大切だと思うんだけどな。


…まぁ、自分がズルいのは、重々承知してるけど。



「…今日からやっと、お前の彼氏だ…って言える」

「え」



…今のセリフも、心臓に悪い。

多分、海堂は無自覚なんだろうけど。
そうじゃなきゃ、こんな平然としてなんか言うわけない。

だってさっきも、顔真っ赤だったし。



「それに、」

「っ、」

「好きなだけ抱きしめていられる」

「…!」



ほんとにさ。
海堂の正体って、小悪魔とかじゃないのかな。割と真剣に。


また強くなった腕の中に閉じ込められて、少し痛いんだけど平気だ。

むしろ、この痛さも心地いい…なんて言うのは、もちろん恥ずかしい言葉だ…っていう自覚はある。



< 168 / 209 >

この作品をシェア

pagetop