彼の溺愛はわかりづらい。


「…暑いよ」

「ごめん。でも、もう少しこのままでいさせて」

「…仕方ないなぁ」



本当は、暑いのなんかどうでもいいけど。
もっと…っていうか、今日はずっとこのままとかでもいいけど。

…多分、私の心臓がもたない。


あと、一階にお兄ちゃんいたんだった。
バレたらマズい、かなり。



「…ここまで来て冗談とかだったら、マジでぶん殴るからな」

「冗談じゃないって。本気と書いてマジだよ」

「…よかった」



そんなに信用されてない…って思うと、なんだか寂しくなってくる。
だけど、それは「今までのツケ」みたいなものだろう。

…意地なんか張ってないで、前から仲良くしておけばよかった。
そしたらもっと、信じてもらえたかもしれないのに。



「…琴、どーした?」

「!」



ほら。

こういうの気づいちゃうの、ズルいし。
こういうとき、名前で呼んでくるのもズルい。




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