彼の溺愛はわかりづらい。
「じゃ、私たちはデートの邪魔しちゃ悪いし、そろそろ退散するね~」
「う、うん…」
「末永くお幸せにね~」
「う、うん…」
…結婚式の去り際のあいさつかよ…って思ったけど、和やかな雰囲気を壊さない方がいいかな…って思ったから、ツッコミたい衝動を抑えて返事をした。
…たった数分の出来事だったのに、なんか数時間あったみたい。疲れた。
「…ほら、何とかなっただろ」
「よく言うよ。何にも考えてなかったくせに」
結局なんとかなったけど、ちょっと考えてるような素振り、私は見逃さなかったからね。
「でも、考えてもみろよ。もし、お前が嫌がらせされるんだったら、実行委員に決まったあとくらいに、既にやられてるはずだろ?」
「あ、確かに」
「それに、お前に手出しした奴は俺が潰すから」
「…。…ありがとう」
なんかかっこいいことを言われたはずなのに、単語のチョイスが物騒すぎて、素直に「ありがとう」とは言えなかった。