彼の溺愛はわかりづらい。
私の周りの人たちは、海堂といい、しぃといい、お兄ちゃんといい、変な人ばっかりだ。…とか声に出すと、「お前もだろ」って言われそうだから言わないけど。
「…これで気になることはなくなったか?」
「う、うん…」
「なら今度こそ行くか」
「うん」
もう一回、知らないうちに離していた手をつないで、本屋さんへ向かった。
本屋さんに着くと、人が多い駅ビルの中でもさらに人が多い気がした。
きっと、参考書を買いに来ている学生なんかもいるのだろう。
レジも慌ただしくまわっていた。
「えーっと、ラノベは……あ、離れないって約束だっけ」
「そうだよ。早速忘れてんなよ」
「う。ごめんなさい…」
「先に見に行くから。俺を置いてくな」
なんだろう、セリフがちびっ子みたいで、なんか微笑ましい。
だけど絶対、そんなつもりで言ってるんじゃないよね。邪念持っててごめんなさい。
そしてとことん、私に甘い気がする。
このままでいったら、私はダメ人間になる気がする。まずい。
…ま、いっか。ダメになったらそのとき考えよう。