彼の溺愛はわかりづらい。


「琴、今の琴クソ可愛いよ」

「…からかわないで。私は真面目なの」



こんなことなら、最初からファッション雑誌買いに行けばよかった。

あと、マナーの本とか。



「からかってないよ。好きな人のことで悩んでる琴、めっちゃ可愛い。琴だって、少女マンガの女の子可愛いって思うでしょ?それと一緒だよ」

「尊きヒロインと一緒にしないで」



マンガのヒロインとは話が違う。

そんなにキラキラしてないし、可愛くもない。可愛げもない。
欠けてるものばっかりだ。



「一緒にするよ。でもやっぱり。服装とかなら可愛くしてもいいけど、それ以外の本質的なとことか、変える必要ないでしょ。だってどうせ、無理するんだから」

「…それの何が悪いの」



無理しなきゃ、成長なんてできないでしょ。

それに、やる前なのに無理って思うのは、私がいちばん思ってるよ。



「バカじゃないの。心配かけていいんだ」

「…それは……よくないけど」




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