彼の溺愛はわかりづらい。


…と、思ったら、ばっちり目が合った。
なんだ、狸寝入りか。


で、で、でもちょっと待って。
そしたら、さっきのも聞かれてたかもしれないってこと!?

…いや、何にも言われないし、今もすぐに目を逸らされちゃったし、それはないか。



「こーとー?」

「え、しぃ、どうしたの?」



しぃに声をかけられたから、慌てて海堂から目を離す。

見てたことがバレたら、絶対絶対からかわれるに決まってる。しぃのことだもん。



「体育祭だね、明後日」

「…うん」

「嫌そうだね」

「うん」



なんで、こんな暑い時期にわざわざ、しかも炎天下の中で運動しなきゃいけないんだ。熱中症にさせる気か、学校は。

しかも実行委員とかあるし。
……いや、実行委員なかったら海堂と付き合えてなかったかもしれないから、そこだけちょっと、ほんのちょっとだけ感謝はするけど。



「頑張れよ、実行委員」

「丸投げしたの、しぃでしょ」




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