彼の溺愛はわかりづらい。
「話は変わるけどさ」
「名前呼びどうこうの話なら聞かない」
「えー」
やっぱりその話かい。
もう聞き飽きたけど……正直迷ってる。
恥ずかしいけど、呼んでみたい気持ちもないわけではないし…。
「なーんか、葛藤してるって顔だね」
「うぅ……だって…」
「悩むくらいなら言ってみればいいじゃん。アイツのことだからデレデレになるの間違いないし」
「そういう問題じゃないし…」
反応が怖いのは…もちろんなくはないけど、それ以上に恥ずかしい。
ノリで「燈!」とか呼んでも、「急にどうした?」って、本気で心配されかねないし。それはそれで嬉しいんだけど。
…私だって、まさか名前呼びがこんなにハードル高いとは思ってなかったよ…。
前は呼べたのに、今じゃできない。
「推しの名前は下で呼んでるんでしょ?」
「そもそも根本的に違うし…」
意味合いが全然違う。
そんな軽い感じじゃ言えないよ。しぃはバカか。言わないけど。