彼の溺愛はわかりづらい。
今まで逃げてきたのが、途端に意味をなくして。
恥ずかしさで上がる体温が、この空間の冷たい空気を感じなくさせている。
ギュッ
「!?」
「…あんなにケンカばっかりしてたのにな」
「…今でも私は、口悪いし」
「知ってる」
「可愛げないし、それでいいの?」
不安になって尋ねると、彼は馬鹿にするかのように嘲笑う。
…なにそれ、ちょっとひどくない?
「どんな琴でも好きだよ」
…なんだか、甘いし。
「…燈、好きだよ」
「なにそれ」
「なんか、言いたくて」
大嫌いだった奴を、こんなに好きになるとは。
…昔の自分に、「予想できないことって起こるんだよ」って教えてあげたい。