彼の溺愛はわかりづらい。
・
・
「ほんっと、ありえない」
あれから、サクッと私に決まってしまった。
海堂ファンの女子たちからのブーイングがもっとくるかと思ったけど、むしろなぜか祝福された。わけわからん。
「なにが」
それなのにコイツは、吞気にクーラーバッグ持ってきて、中から某有名アイスキャンディーのソーダ味を取り出して、汗水流しながら作業する私の横でそれを食べてる。鬼畜か。
「今ここに、こーして私とあんたがいることが」
「二人っきりで?」
「あーそーだよ」
しぃが「ごめん」って言ってたのはこーゆーことだったのか…って、しぃを少し恨めしく思う。
購買の幻のスパイシートーストあげたのに。一週間に一個しか作られないやつ。
まぁ、そのあと「代わりに海堂がなんか奢ってくれる」とかなんとか言ってた気がする。本当かどうかは知らんけど。
そして未だに何も奢ってもらってなんかいないけど。
「ねー海堂ー」
「なんだよ」
作業から目は離さないまま、私は海堂に声をかけた。
「しぃが言ってたけど、なんか奢ってくれるってほんと?」
「…あぁ、それか。…別に、実行委員引きずり込んだから、詫びというか何というか…」
「は?詫び?」