彼の溺愛はわかりづらい。
奴はすごい抵抗してたけど、心配してる私から逃れることは許さないから。
…やっぱり顔赤い。
「いこ、保健室。やっぱり顔赤いから。こんなクソ寒い廊下にいたら、余計に悪化しちゃうよ。ってか、病人に気づかなかったのかよ、山セン」
「…確かにまぁ、ちょっと……うん、もう、うん。…具合悪い気がしてきた…」
「なんだそのしどろもどろな答えは」
ハッキリしろや。
マジでコイツ、ワケわからん。
「ま、いーや。さっさと保健室行こ」
「…あ、あぁ…」
「…アンタが弱ってるとか、なんか変なの」
いっつも、私にキャンキャン嚙みついてくるところばっかり…というか、それ以外のコイツを見たことないし。
「うるせーよ」
「心配してんのに」
「そりゃどーも」
雑すぎる返事にムカつきながら、「ふざけんな」と言いそうなこの口を慌てて閉じる。
…さすがに、具合悪い奴と言い争いするほど、鬼畜じゃないし。
…ちょっとした我慢に違和感を覚えながら隣のアイツを見ると、もう、そんなに具合悪いようには見えなかったけど…まぁ、廊下にいるのもヤだし、あえてツッコまないでおこうと思った。