彼の溺愛はわかりづらい。
コイツにも一応、詫びという概念があったらしい…というか、それは私に対しても適応されるらしい。
「じゃ、遠慮なく。駅前のサーティツーアイス、トリプルで」
「腹壊さねぇの?」
「夏の私のお腹は、鋼でできてるんだよ」
「錆びるだろ」
とか言いつつ、却下はされない。
「…や、やっぱやめとけ、トリプルは」
「なに、やなの?」
「腹壊されたら困る。一つにしとけ」
「えー、関係ないじゃん、海堂には」
奢ってもらえるんだもん、どうせなら高いの頼みたい。
つーか、お腹壊したとしても、海堂には頼らんから安心しろ。
「関係あるんだよ。いいから、トリプルはやめとけ。その代わり、毎日サーティツーアイス一個、奢ってやっから」
「…え、マジ?…もしかして、何か私の物壊した?それとも見返り要求すんの?」
「どれもしねーわアホ。まぁ、毎日つっても、こうして学校で作業した日の帰りとかだけな」
…マジで?どうしたよ海堂。いつもそんな感じでいてくれ。
「え、うっそ。俄然やる気出てきたんだけど。毎日作業でもいいんだけど。考えてみれば、断然授業よりもラクだし楽しいし」