彼の溺愛はわかりづらい。


私がそう言うと、海堂は嬉しそうに笑った。

それが、美形故に「可愛い」なんて思っちゃってる自分がちょっと悔しい。



「じゃあ、今日の放課後、…デ、デート、だな」

「へ?」



噛みっ噛みで、何言ってんの?



「ちょ、やだ。あんたのファンとやらに殺されるからやめてよ」

「…殺されなければ、いいのか」

「なにが?」

「だから、『デート』でいいのかって言ってんの!」



それはつまり、天敵ヤローと恋人的な感じで見られるってことで…。

…今までなら「絶対ありえない」って思って、ソッコー「いいわけねぇだろ」とか言ってたはずなのに。
ちょっとずつ、海堂のこと「そんなにヤな奴じゃないかも」なんて思い始めて、この質問に即答できなくなってる私は、きっとどうにかしてきてるんだと思う。


…あ、そーだ。
友達相手とか、兄弟姉妹が相手でも、『デート』なんて言うじゃん。

なんでそれに早く気が付かなかったんだろう。


そしたら、あんなこと、あそこまで真面目に考えなくて済んだのに。



「…別に、いいんじゃない?名称くらい、どうでも」

「…っ、そうか…!」



…だから、なんでそんなに嬉しそうにするの。

これ以上、私の母性本能をくすぐりそうな顔はやめてくれ。



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