彼の溺愛はわかりづらい。







「デートじゃん、それ」

「は?…だからまぁ、名称的にはそうだって言ってるじゃん」

「なーにが「名称的には」よ。内容的にもデートでしょ、それ」



…なんで、夏休み始まってから今まで会わなかったから、結構久しぶりに会った親友に、私は初っ端からお説教されなくてはならないんでしょうか。



「聞いてんの?琴」

「あー、聞いてる聞いてる」

「ふざけてんの?」

「滅相もない」



夏休み初日に海堂といたことを話したらこのザマだ。

聞きたいってせがんできたのはしぃの方なのに、この扱いは酷くない?酷いよね?



「ってか、勇気出したんだねー、海堂」

「へ?…え、やっぱそうなのかな?毎日サーティツーアイスはキツイかな…」

「違うわよ、そこじゃないから。それにアイツ、バイトしてるらしーよ。誰かさんのために」

「へぇー…。あ、例の『好きな子』かな?」

「ぶっ!」



私がそう言った途端、しぃは飲んでた紅茶を吹き出したものだから、私は慌てて台拭きを渡した。…にしても、汚いわ、しぃ。


私が渡した台拭きを受け取って、テーブルを拭いてから、ティッシュで口周りを拭いたしぃは、ものすごく据わった目をして私をジッと見つめてくる。

…なにやだ、怖いんだけど。




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