彼の溺愛はわかりづらい。
…どこにいんだよ。
まさか、帰ったりしてねぇよな?荷物あるし。
顔はあまり動かさないまま店内を見てみると、両手にコップを持って突っ立ってる渋川を見つけて、目が合った。
…早く来いよ。
そう目で合図すると、諦めたような感じで渋川がこっちに来た。
少しずつ近づいてくる渋川にも聞こえるように、俺はギャルたちを追い払うためにこう言った。
「すみません、連れと言っても、友達じゃなくて彼女なんですよ」
「え…」
「はい?」
…ギャルたちを追い払うため…だけど、半分願望だった。
…なのに渋川、「はい?」とか言ってんじゃねぇよ。傷つくだろーが。
言った途端、ギャルたちの顔は徐々に青ざめていった。
…さっさと帰れ。マジで。
つーか渋川早く来い。突っ立ってないで。
アイコンタクトを送っても、渋川が近づいてくる様子はない。
…仕方ない、か。
「あ、ちょうど来たみたいです、彼女。おかえり。水、ありがとう」
「…あ、うん」
いつもとは俺のキャラが違いすぎて、面喰ってるような様子の渋川は、ほぼ放心状態のまま、反射的に出てきたような声だけ出した。
…ちょっとだけアホ面なのが、また面白い。