彼の溺愛はわかりづらい。


そのやり取りを見て、ギャルたちは顔を真っ赤にしながら言った。



「なっ、彼女いたなら最初からそう言いなさいよ!顔だけなのね!」



…この時の俺は、「やっと帰ってくれる」と、それぐらいにしか思ってなかったんだけど。



「…あの、それは違うと思います」

「はぁ~?」



少し怒ったような渋川が、はっきりと言った。

ギャルたちは当然のように怒りが増幅されたんだと思う。
…火に油を注ぐようなことをしてる自覚は、多分渋川にはないんだろう。



「勝手に押しかけておいて、相手が困ってる様子を見せていたにも関わらず、それを無視してまで居座ろうとした根性だけは大したものだと感じますが、」

「や、渋川、もういいから…」



頼むからこれ以上、めんどくさくしないでくれ…と思うのと同時に、渋川が俺のことで怒ってくれてるのは、たまらなく嬉しかった。



「ですが、相手が困った様子を見せていることを無視するのは、些かいかがなものかと…もしかしたら気づいていなかったのかもしれませんが、人の気持ちを汲み取ることもできない人が、恋人できるとは言い難いと思います」



渋川はやや早口でそうまくしたてた。

…正論だけど、それ逆効果だろ。




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