彼の溺愛はわかりづらい。


その口調と、その「とてもいいもの」って。


渋川はカバンの中をガサゴソ探って、何かを取り出した。

…色がピンク系なんだけど。わざとか?



「ほら」

「なんだこれ」

「携帯型扇風機。あげるよ。100均のやつだし」



渋川が取り出したのは、ものすごーくファンシーなデザインのものだった。

…軽く嫌がらせじゃね?なんて思ったけど、渋川からもらえるものならなんでも嬉しい。



「へぇ、こんなのも売ってんだ。…サンキュ」



…100均すげーな。

なんて思いながら、それを受け取る。



「アイスのお礼も兼ねて」

「なんだそれ。元々、俺が詫びとして奢るのに」

「それにしても多い気がするからあげる」

「サンキュ」



なら、素直にもらっとこう。

…気遣いとか、ありがたいし。渋川からなら余計嬉しい。


試しにスイッチらしきものを押してみると。

…おぉ、すげぇ。涼しい。

風がぶわっと吹いてきた。




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