彼の溺愛はわかりづらい。
渋川を見つめているのに気づかれないように、俺は店員に少し早口で注文する。
「すみません、じゃあ、コレとコレ。それぞれシングルで…マンゴーの方はカップ。お前は?」
「コーンで!」
「…だそうです。お願いします」
「かしこまりました。合計で740円になります」
「思ったより高いな…」
なんてぼやきながら財布を取り出したけど、そうだ、俺には手付かずのバイト代があるんだった…と思い出した。
渋川が、俺のぼやきを聞いていたらしく財布を取り出そうとしたから、俺はそれを手で制して、自分の財布からお金を払った。
「はい、750円、お預かりします。10円のお釣りですね。隣でお品物を受け取ってください。ありがとうございました」
隣では、俺たちが注文したアイスを持った店員がにこやかにそれを差し出してくれていたから、それを受け取った。
受け取ったとき、「ふふ、カップルさんですか?お幸せにね♡」なんて言われて、うっかりにやけそうになったけど、気を引き締めて曖昧に笑っただけにしておいた。
「…そこの公園で食べよっか」
「そうだな」
日差しが強いから、近くにあった、日陰になっている公園の休憩スペースに二人で座って、アイスを食べる。
…なんだ、これじゃあ本当にカップルみたいじゃんか。
そう思ってひとり、俺は嬉しさを噛み締めていた。