彼の溺愛はわかりづらい。
タンタンと心地いいリズムを奏でながら階段を下りていくと、ちょうど、出かけていたはずの世永くんが帰ってきていた。
「あ、おかえりなさい、世永くん」
「ん、琴。ただいま。何してたの?」
「クラスメイトが来て、一緒に課題やろうって話になったの」
海堂はクラスメイトだよね、うん。
…最近おかしいけど、多分そのはず。
「そんなの、朋が許可したの?」
「お兄ちゃん、教えるの壊滅的に下手だよって教えたら、渋々納得してた」
「あぁ、なるほど」
きっと世永くんも経験者なんだろう。遠い目をしている。本人の前で。
「…勉強なんて、俺が教えるのに」
「…うーん、じゃあ、二人とも行き詰ったら教えてくれる?貴重な社会人の息抜きの時間、邪魔したくないもん」
…まぁ、お兄ちゃんは結構シスコンだから、私に構うのが息抜きみたい。時々うざいから、早くいい彼女作れって思うけど。
「邪魔なんて、思うわけないのに」
「ふふ、妹みたいなんだもんね」
「…それはどうかな」
「あれ、違うの?」
前に、世永くん本人が言ってたはずなんだけどな。
…そんなに親しくないって思われてるんなら、ちょっとというか結構ショックだけど。