99%アンドロイド
その事件があって以来、トラはボクのことを嫌うようになった。
それを見たハカセは「お前とトラは犬猿の仲だな」と言った。
「ケンエンノナカ」という言葉の意味はいまだによく分からないが、おそらく「ジゴウジトク」のような、とある様を一言で表現した言葉なのかもしれない。
こういった類の日本語はアンドロイドにとって難しい。
とりあえず今の時点で分かっているのは、トラがとても太っていて、そして凶暴で、ボクと「ケンエンノナカ」ということだ。
朝食を終えると、ボクはハカセが使用した皿を洗った。
ハカセによると、ボクの皮膚は「ボウスイカコウ」が施されているから水仕事をしても問題ないらしい。
もちろん川や海で泳ぐことだってできる。
入浴することもできるみたいだが、ボクのカラダはボクが充電される前に専用のケースで綺麗に消毒されてしまうため、あまり意味がない。
皿を洗い終わったら朝食テーブルを綺麗に拭き、唸り続けるトラの毛をブラシで整え、研究所のあちこちに散らばっているハカセの服や下着を回収し、洗濯する。
月、水、金は掃除機をかけ、火、木、土はトイレと浴室の掃除をする。
日曜は基本掃除はお休み。なぜならハカセが1日だらだらと過ごすから。
すべてを終えると、ボクはパソコンと睨めっこをしているハカセのもとに戻った。
「終わりマシタ、ハカセ」
ボクが言うと、ハカセは右手をあげて「ごくろう」と言い、にんまりと笑った。
ボクには感情はないけれど、こうやって微笑むハカセの顔は必ず記録する。