99%アンドロイド
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「終わったぞ、A。手術は成功だ」
起動と同時に、腕を組んだハカセの姿が見えた。
「アリガトウゴザイマシタ、ハカセ」
ボクのケンコウコツは、既にきれいに閉じていた。
バッテリー以外にも少しだけ古びた部品を見つけたらしく、ハカセはついでにそれらの交換も行ってくれたらしい。
「新品の気分はどうだ、A」
「……ボクに「キブン」はアリマセン」
「ははっ、そうだよなぁ」
「さぁて遊びは終わりだ」そう言ってハカセは老眼鏡を外すと、リョウウデを上にあげて思いっきり伸びた。
「ああ、だりぃだりぃ。こういうとき、お前が羨ましくなるよ、A」
「ウラヤマシク?」
「お前になりたいってことだ」
どうしてハカセがボクになりたいのかは分からないけど、会話の流れから分析すると、おそらくハカセは「キブン」とか「ヒロウ」を感じたくないのだろう。
ボクはアンドロイドだから、それらを感じない。
だからハカセはきっと、ボクになりたいのだ。
「ハカセ、ニンゲンがアンドロイドにナルコトは可能ナノデショウカ?」
そう聞くと、ハカセの眉が2.4㎜ほど動いた。
ハカセがこのような動作をするのは、ボクの記録メモリ上初めてだった。
「ありえないね」
ハカセはそう言い残すと、右手を上げ、いつも通りのノンキな様子で修理室を後にした。
研究室はボクだけになり、一気に静けさが増した。