99%アンドロイド

***


「終わったぞ、A。手術は成功だ」


起動と同時に、腕を組んだハカセの姿が見えた。


「アリガトウゴザイマシタ、ハカセ」


ボクのケンコウコツは、既にきれいに閉じていた。


バッテリー以外にも少しだけ古びた部品を見つけたらしく、ハカセはついでにそれらの交換も行ってくれたらしい。


「新品の気分はどうだ、A」

「……ボクに「キブン」はアリマセン」

「ははっ、そうだよなぁ」


「さぁて遊びは終わりだ」そう言ってハカセは老眼鏡を外すと、リョウウデを上にあげて思いっきり伸びた。


「ああ、だりぃだりぃ。こういうとき、お前が羨ましくなるよ、A」

「ウラヤマシク?」

「お前になりたいってことだ」


どうしてハカセがボクになりたいのかは分からないけど、会話の流れから分析すると、おそらくハカセは「キブン」とか「ヒロウ」を感じたくないのだろう。


ボクはアンドロイドだから、それらを感じない。


だからハカセはきっと、ボクになりたいのだ。


「ハカセ、ニンゲンがアンドロイドにナルコトは可能ナノデショウカ?」


そう聞くと、ハカセの眉が2.4㎜ほど動いた。


ハカセがこのような動作をするのは、ボクの記録メモリ上初めてだった。


「ありえないね」


ハカセはそう言い残すと、右手を上げ、いつも通りのノンキな様子で修理室を後にした。


研究室はボクだけになり、一気に静けさが増した。

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