秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
喉が擦り切れる程の大声を出して、何度も訴えた。二人の御前であるにも関わらず、泣いて叫んで取り乱した。
しかし、二人は責めることもしなければ、慰める言葉もかけてもらえなかった。
事件の解釈を説明することもなければ、余計な一言は何一つ言わず、ただそれだけを伝えて去ってしまったのだ。
両親が亡くなって、神殿に身を寄せて。親代わりとして優しく接してくれたはずの大聖女様と神官長。
ひとつ信頼を失えば、積み重ねてきた絆など、呆気ないものだった。
……そうして、その翌日。
保護者であるこのお兄様をお供に、夜中に人目から隠れるようにして出発したのだ。
まるで、夜逃げのように。
数日かけて馬車に乗り。本日、このルビネスタ公爵領、領都レディニアに到着したのだった。
「……」
ほんの数日前に突如として起きた出来事を思い出しては、俯いてしまう。
悔しいのか、悲しいのか。思い出しては目頭が熱くなって涙が滲んできた。
どうして……こんなことになったのだろう。
誰も教えてくれない。目の前にいるたった一人の肉親でさえ。
……恐らく、お兄様は何かを知っているだろう。