秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
頑張って変装したのに、結局バレてしまいました。
「『可愛いメイドがいる』と子息らが騒いでいるから、誰のことかと思ったら、まさか君だったなんて」
「はぁ……」
「これだから、もう……」と、アルフォード様はぶつぶつと呟いている。先程は酔っ払い令息を笑顔で撃退したのに、今は面白くなさそうな表情だ。
あわわ。怒っていらっしゃる。また、言いつけを守らなかったから。
「まったく、このお転婆さんは。私室にいるよう言ったのにどうして来てしまったんだい?」
「そ、それは……」
「ひょっとして、一人でいるのが寂しかった?」
「あ……」
これは、もう。下手に隠したらますます怒られるような気がする。
私を問い詰めるその美しい顔は笑ってはいるが、不機嫌を敢えて隠す笑顔ほど怖いものはない。
それに、私をじっと見つめる大きな瞳に嘘はつけなかった。
なので、「実は……」と、本当のことを話す。
庭師さんらの夜会に参加したい。カードゲームがしたい。
参加するには、自分の分のご馳走を持っていかねばならない。
正直に話したのだが……アルフォード様は、もう笑顔で不機嫌さを隠してはいなかった。
「何を言ってるんだ!……ダメ!ダメだ!」
結局、怒られたのでありました。