秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

「……あぁっ、ローズ!なんて可哀想に!君に涙を流させるなんて、万死に値する行いだというに……!」



ほんの少しの間のような沈黙を経てから、その口から声高らかにそう吐き出した。

私はまたしても衝撃で体を震わせる。

だって、いつも静かで穏やかな口調のはずのアルフォード様が、急に舞台俳優のように声を張り上げたのだから。

顔つきが変わったと思ったら次、話し方まで変わるだなんて……!



「大丈夫、大丈夫だよローズ。俺が傍にいるから。もう、君に寂しい思いをさせないから……」

「えぇ、約束よ、アル?もう、私を置いてどこにも行かないで?離さないで……!」

「約束するよ、ローズ。俺の愛しい女神、愛してる……」



そう言い合いながら、夜会会場のど真ん中で愛を叫び合って熱く抱擁し合う二人。

二人の情熱的な感動の再会の一部始終を目撃した周囲の反応は、真正直に感動して拍手する者もいたり、ヒソヒソと疑惑の呟きが聞こえてきたりと微妙だ。

だが、当の二人はそんな周りの反応を気にせず抱擁を続けている。見つめ合ったりと、今にも接吻しそうな勢いだ。
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