秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
しかし、容疑をかけられ当事者となっているとはいえ、妹にでさえ聖騎士団副団長という立場上、守秘義務を怠らないのだ。お兄様は。
そして、このお兄様ですら私を糾弾しない。タンザナイトの家名を貶めるような醜聞だというのに、苦言のひとつもないのだ。
この件に関して口を開いたこととは『被毒した聖女見習いの者らは、命に別状はない』ということぐらいで。
私はやってない!と、どれだけ訴えても『わかった』と、お兄様ですらそれしか言ってくれない。……何をわかってるんですか?
常に仏頂面で、元来口数の多い人ではないが、ここまでくるともう何の言葉も出てこない。
何の説明もなく追放を言い渡され、蚊帳の外に出されたまま事が進められていることが、本当にただ恐ろしかった。
聖女であった母の面影を追って、始めた神殿勤め。まだ年齢に満たず、神託の受けてない私は聖女見習いとして雑務、下働きの毎日だったけど、聖女様らの補佐を出来ることを誇りに思っていた。
なのに、そんな平穏な毎日が突然奪われるなんて。
今後、どうするべきなのか。どうしたらいいのか。
数日馬車に揺られながら考えても、答えは出なかった。