秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
だが、彼女の子犬のような愛らしい顔つきや、そんな顔とは違った艶やかな大人の体のラインといった魅惑凝縮の麗しい見目の方が、疑惑の出自よりも衝撃だった。
麗しい。まるで、女神が舞い降りたかのようだ。
……しかし、彼女の魅力はそれだけではなく、喜怒哀楽をもろに表現する高位貴族の令嬢らしかぬ表情の変化や、明朗快活な性格は学園に通うお堅い貴族令息の目には新鮮に映ったらしい。
華やかで笑顔いっぱいのローズマリー令嬢の存在に、どの貴族令息も虜になる。
貴族令嬢からは、令嬢としての矜持のカケラもない、マナーがなっていないと冷たい目で見られていたようだが。
……中でも特に、彼女に懸想して側を離れなかったというのが、なんと。同級生であるエリシオン王太子殿下と、その側近といわれる高位貴族の子息四名だったそうだ。
宰相の甥、騎士団長の次男、外交担当大臣の嫡男。
そして、アルフォード様。
……私も、この噂を神殿に訪れた令嬢らから聞いた時は、驚いた。
長年想い慕っていた殿方の名前を、まさかこんなカタチで聞くとは思いもしなかったからだ。