秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない


(アゼリア様……)



ずーんと重い気持ちを胸に抱えながら、右の手首に光る赤い魔石のブレスレットを縋るように見つめる。

このブレスレットは、こんな状況でも唯一私に寄り添ってくれた、姉のような存在の御方がくれたものだった。

王太子殿下の婚約者でありながら、孤児院の援助活動に積極的で、心優しい公爵令嬢のアゼリア様。

王都の孤児院が主催するバザーのお手伝いに行った時、私たちは出会った。

聖女見習いの私らにも、親しみを持って声を掛けてくれたり、お茶会を開いてくれた優しいアゼリア様。



私も、姉のように慕っていたアゼリア様。

……以前、王太子様に婚約破棄されるかもしれないと巷では囁かれていた。

こんなにも美しくて優しい、素敵なアゼリア様をお捨てになろうとしてるのか?直接お話を聞きたくて、聖女のお姉さまの付き添いとして見習い仲間のみんなと王宮に忍び込み、王太子様に直談判しに行った。今、考えたら不敬極まりない。

しかし、話してみると王太子様も素敵な御方で。アゼリア様の妹分として良くして頂いた。

そして、アゼリア様の杞憂だったのか、先日、二人はめでたく婚姻式を終えた。

アゼリア様のウェディングドレス、素敵だったな……。
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