秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

だが、アゼリア様はそんなのもグッと堪えて、王太子殿下にも苦言を呈する。



『殿下、冷静にお考え下さいませ!彼女の公言を認めてはなりません!』

『まだ言うか!……この醜女が!』

『何を言われようとも私は退がりません!……殿下!そのっ……』



アゼリア様の言葉は遮られた。

ローズマリー令嬢の傍に侍っていたうちの一人、アルフォード様が突然、口論中の二人の間に割って入るなり、アゼリア様を突き飛ばしたのだ。

聖騎士として鍛錬しているアルフォード様の屈強な力にはもちろん敵わず、細身の体のアゼリア様は吹っ飛ばされて地に転がる。

公爵令息が公爵令嬢を突き飛ばすという突然の暴力に、観衆は一斉に騒めき出す。

傍で見ていた聖女見習いの仲間たちも思わず悲鳴をあげた。

『ああっ!アゼリア様っ!』

『いやぁっ!』

その身を案じて、仲間たちは一斉に倒れ込んだアゼリア様に駆け寄っていく。

『アゼリア様、アゼリア様!大丈夫ですか!』

『アゼリア様ぁぁっ!お怪我はぁっ!』

『だ、大丈夫よ、あなた達……落ち着いて、落ち着いて、ね?』
< 123 / 399 >

この作品をシェア

pagetop